スカーレットの悪女
くつくつと笑う大希は、鋭い犬歯を覗かせてゆっくりと腕を組む。


若頭として、支配者として、志勇とは経験値の違う大希は視線を独占する方法を知っている。


あえてゆったりとした動作をとることで、大希は注目を集めた。


こうなれば覇王の独壇場、誰も口を挟むことができない。


大希の執着心を侮っていた。


この男は私を諦めるつもりすらなかったんだ。



「荒瀬にとっては実莉を差し出すだけで実害はない。こんな好都合、拒否するはずがないねん」



大希は腰を曲げ、私と目線を合わせる。


ぎょっとして目を剥く私を見て、たまらないといった様子で破顔した。



「残念、俺から逃げきれんやったな」



まさに獲物を追い詰めた捕食者。


逃げ道を探していた私は、ついに追い詰められ仕留められてしまった。
< 600 / 807 >

この作品をシェア

pagetop