スカーレットの悪女
「ははーん分かった、照れてんやな。なんべんもキスしたやん、満更でもなかったくせに」

「あーーー!!うぐっ!」



キスしたことを暴露されるとは思わず、私は思わず大声を発して大希の声をかき消そうと試みた。


しかし、頭頂部に思い切りチョップを食らって首がギュンっと縮んだ。



「うるせえ、こんなとこで痴話喧嘩すんな」



叩かれた頭を押さえて振り返ると、どうやら背後から志勇に手刀をお見舞いされたようだ。


うう、痛い。動揺して正気でいられるわけないんだからこれくらいやかましいのは許してよ。



「へえ、ほんまにお気に入りなんやなぁ」



私は涙目で志勇を睨んでるのに、大希の目にはじゃれ合いに見えたらしい。



「言っとくが、そいつになんの価値もないからな。ゆすっても助ける筋合いはない」

「勘違いせんで。俺ほんまに実莉が好きやねん」



志勇は“こいつに利用価値はないぞ”と念を押したけど、大希はそのつもりはないと笑って返答していた。



「まあ、俺も鬼やないし今すぐ大阪に来いとは言わへん。
実莉は友達が多いからちゃんとお別れしたいやろ?1か月は我慢するからその後大阪に戻っておいで」



私はYESなんて言ってないのに、話はどんどん進んでいく。


拒否したところで絶対虎の牙からは逃れられないって分かってるけど、1か月の猶予の間に覚悟を決めろと?
< 604 / 809 >

この作品をシェア

pagetop