スカーレットの悪女
私が大人しくなった後、大希は予め作成していた誓約書に志勇と共に血判を押した。


誓約書には、荒瀬と西雲は互いに干渉しないこと、壱華の命が尽きるまで荒瀬は西雲のシマを侵略しないこと、そして壱華の代わりに私を西雲に差し出すことが書かれていた。


これで本当に私は大希に捕らわれてしまう。


だけど現実味がなくてただぼんやりとその様子を眺めていた。


全部終わって、その頃にはもうとっぷり日は暮れていたため、大希たちは帰る身支度を始めた。



「あ、せやった」



預かっていたマフラーを返そうとしたら、しゃがんでいた大希が急に腰を上げるからヒップアタックを食らった。



「うわっ、急に立ち上がらないでよ!」

「あかんケツで突き飛ばしてしもうた。ちっさくて見えへんかったわ」



よろめいて畳に手を着くと心配して駆け寄ってきたけど、ムカつくから目線の先にあったネクタイを引っ張った。


しゃがんでるアンバランスな状態でネクタイを引っ張るけど体幹が強すぎてビクともしない。


そんなことより、ちっさいは余計だわ!



「あんたね、未来の嫁なんだからもっと丁重に扱いなさいよ!」

「自分で嫁って名乗るのええなあ」



ヒップアタックしたことに関してまったく反省の色が見えない大希。


私は怒りを燃料に、片手でネクタイを引っ張ったまま大希の頬を思いっきりビンタした。
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