スカーレットの悪女
「チッ、おいそれ以上話すな」



志勇はこんな短い会話でも我慢できなかったみたいで、壱華の腕を引っ張って胸の中に引きずり込んだ。


大希って志勇と並ぶくらいイケメンだもんね、その気持ちも分からないことはない。



「実莉には新しい振袖プレゼントしたるから楽しみにしとって」



でも大希は本当に壱華に未練がないらしく、私にしまりのない笑顔を向ける。



「ちゃんと緋色で用意するから」



強引に大阪に連れ去ろうとしてるくせに、私が話した内容はしっかり覚えている。


悔しいけど、大希は申し分ないほどいい男だ。



「すぐ結婚するんやったら振袖着る機会ないなあ。まあ成人式で着たらええか」

「黙ってロリコン」

「ロリコンちゃうわ。なんなら俺、年下好きになるの初めて。実莉やから好きなんやって」



でも認めたくない。魅力的すぎて底なし沼のタイプの男だって分かってるから。



「みーちゃんって本命にはツンデレなタイプだったんだ」

「外野は黙ってて!」

「珍しく余裕ないじゃんウケる」



必死加減をツンデレと表現する颯馬にピシャリと言って除けたら笑われた。


周りを見回すと微笑ましく見守られていることに気がついて変な気分になった。
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