スカーレットの悪女
「あんた、美花でしょ！何であんたがここに！？」

「……」

「ねえ、誰の差し金なの？」

「うるさい、邪魔ばっかりしやがって！」



凶器を奪い取られても聞く耳を持たない美花は、壱華を睨みつけてにじり寄る。


丸腰の状態でまだ壱華に迫ろうとする、その執着の意味が分からない。


美花が恨むべきは私だ。私のせいで離婚したってことは、美花も知ってるはずなのに。


立ち上がろうとする美花の手元を見ると、先程の凶器よりも小さなナイフが握られていた。


その刃先は、強い憎しみを携えて壱華を狙っていた。



「壱華！」



私は奪い取ったナイフを投げ捨て、とっさに美花の服を掴み、全体重をかけて懇親の力で壱華に近づくのを阻止した。


振り払おうと暴れてバランスを崩した美花、グラッと揺れる視界。


美花が覆い被さるように倒れ込んだと思った瞬間、感じたことの無い鋭い衝撃が下腹部を走った。
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