スカーレットの悪女
ひどい顔だけど泣いたらすっきりした。


だけど私の心は晴れないままでいる。


だって私は作中最も波乱万丈な人生を辿った悲劇の人物を、凛太朗を救うことができなかったから。


凛太朗は今、志勇の駒使いとして暗躍しているらしい。


原作より志勇に気に入られるのがずいぶん早い。


志勇の部下になったということは、それだけ過酷な人生を歩む時間が早まったということだ。


凛太朗は何を思って志勇の下についたのだろう。


お願いだから生き急ぐことだけはやめてほしい。


心配だけど合わせる顔がなくて、私は潮崎の自室にこもって布団にくるまっていた。


どっちにしてもこの顔じゃ出歩けないし、凛太朗に会った時のシミュレーションでもしておこう。



「実莉さん、もう昼ですけどいつまで布団と戯れてるつもりですか」

「えっ……」


ところが、ノックもせずドアを開けて入って来た何者かによって思考は遮れた。


私は思わず耳を疑って固まった。


この声間違いない、凛太朗だ。


え、待って。急展開過ぎて体がついていけない。


まるで大阪にいた期間が嘘みたいに普段通りのノリで向こうから来たんだけど。


なにこれ、もしかして夢?
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