スカーレットの悪女
振り返るとそこにいたのは志勇だった。


だからなんで荒瀬兄弟は神出鬼没なのよ!


あんた、壱華とイチャイチャしたいんじゃなかったの?


驚いて硬直すると、その隙に並んでいた凛太朗共々、両手を振り下ろしてチョップを食らった。



「痛っ……」

「いったーい!」



控えめに痛がる凛太朗と対照的にわざとらしく痛がると、志勇は片方の口角を上げて私の顔をじろじろ眺める。



「大げさだなおいこら、顔見せろよ」

「やめてよ目がパンパンに浮腫んでるんだから!」

「ひでえツラだな、壱華に送ってやる」



さらに私の顔にスマホのカメラを向け、このひどい顔面を撮影しようと目論んでいるらしい。



「やめて、こんな顔見たら壱華が心配するから!凛太朗、私を守ってよ」



両手で顔を隠して凛太朗の背後の立ったけど、いつの間にか後ろに回られて腕を後ろ手に組まされていた。



「無茶言わないでください、さあ若、撮っていいですよ」

「裏切者ー!」



しまった、今や凛太朗は志勇の下僕。


私のお願いなんて聞いてくれるはずがないんだ。


もがいて逃れようにも、完全にロックされて身動きが取れない。


結果、志勇のスマホには髪を振り乱す必死な形相の山姥のような人物が映し出され「必死過ぎてババアになってんじゃねえか」としばらく笑いものにされた。
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