スカーレットの悪女
「で、あんたはどうしてここに?」



しばらく写真を消してほしくて格闘したけど、志勇からスマホを奪い取れなくて断念した。


代わりに疑問を口にすると、志勇は凛太朗に視線を飛ばした。



「凛太朗を本家で預かることになった」

「え、どうして?」

「バレたんだよ、俺の駒使いだって」



どうやら志勇は凛太朗に用事があって潮崎を訪れたらしい。


そして凛太朗は急遽引っ越しすることになったようだ。


だから気軽に会えなくなる前に私に会いに来たのかな。



「ここは金獅子派・クソ親父の息がかかってる組織だ。スパイ行為みてえなことさせたからな、これ以上は置いておけない」

「……凛太朗が本家に来るのか、これは心強い!」



冷酷な志勇が捨て駒にせず本家に連れていくとは。凛太朗はかなり有能らしい。


しかも迎えに志勇自ら来るなんてよっぽどお気に入りだな。


つまり、原作より1年早く凛太朗が本家に住まうことになるのか。


壱華の味方が増えてなによりだ、と嬉しくて語気を強めた。



「そういうことだ。それで、荷物は全部まとめたんだろうな」



志勇が問いかけると、凛太朗は姿勢を正して頷く。


狼に服従する小型犬みたいだ。そんなベビーフェイスの小型犬が数年後、荒瀬を支える柱のひとつになると思うと誇らしい。


でも、今の凛太朗の精神状態を考慮すると心配の方が勝る。
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