スカーレットの悪女
「はい、元々荷物は少ないので大丈夫です」

「分かった、お前は先に行ってろ」



だけどずいぶん志勇が凛太朗を気遣ってくれてるみたいだから不安が薄れる。


私がいない間でも凛太朗の精神状態が崩壊しなかったのは志勇のおかげもあるのかな。



「……ようやく気が抜けたみたいで安心した」



すると、凛太朗が出て行った扉を見つめて志勇が信じられない言葉を呟いた。


あのいじわるでひねくれた志勇が正真正銘凛太朗を気にかけてるなんて。


壱華と出会ってこの男も変わったな。


それとも私相手だからそんな油断した態度をとるのか。


きっと壱華を好きになる前は他人に情が移るなんて、この男にとってはありえないことだったはず。



「あ?なんだその顔」



すると志勇は私のぽかんと口を開けた顔を見て眉をひそめた。



「志勇もなんだかんだお気に入りには優しいよね」

「誰と比べてんだ」

「大希もお気に入りにはかなり甘々だったから」

「あいつは俺よりよっぽど非情だ」

「ふーん」

「だからこそお前みたいな跳ねっ返りに惚れるなんて思ってもなかった」



確かにそれでも志勇は大希より扱いやすい。


私自身、大希は壱華みたいなスレンダー美女がタイプと思ってたから私に気持ちが傾くなんて予想できなかったよ。



「ね、私もそう思う」

「ロリコンなのかと思ったがこれまでのあいつの女は全員年上らしい。つまり望月はロリコンじゃねえってことだ」



自分でもぶっ飛んだ跳ねっ返り女だと思ってるから否定せず同調したら、志勇の口から大希に関する新情報が寄せられた。


へえ、やっぱり大希って本当は年上好きなんだ。じゃなくて問題は、なんで志勇が大希の恋愛事情を知ってるのかってこと。
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