スカーレットの悪女
何が起こったのか分からず、衝撃を受けたところに視線を移すと、左の下腹部にナイフが突き刺さっていた。

目の前の事実を受け止めきれず、私はただ刺された部分を見つめていた。



「そんな……刺すつもりじゃ……」



暴れていた美花は一転して静まり返り、呆然と凶器から手を離した。


カラン、と床に落ちたナイフ。


じわり、制服に広がっていく赤い血。


痛みより先に、刺された部分が猛烈に熱くなった。



「うぅ……っ」



刺されたと知った私は、言葉にならない叫びを上げた。



「みの、り……?」

「そうよ……元はと言えば、全部あんたのせいなんだから!私は何も悪くない!」

「実莉!」



混乱したような表情で吐き捨て、走り去っていった美花。


壱華は美花に目もくれず、私のもとに駆け寄ってきた。
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