スカーレットの悪女
「なんで志勇が知ってんのよそんなこと」

「知るかよ、ゴシップ好きな颯馬に聞け」



訊くと出所は颯馬らしい。ああ、確かにそういう系の話題には涼と一緒に食いついてくるような男だった。


しかし大希より精神年齢は実質年上だもんな。あの虎、野生の勘は間違えてないな。


この世界ではみんなの末っ子みたいな扱いされてるけど、私の真の魅力に気づいた男がいるのか。


あやつなかなか見る目あるな、とほくそ笑んだその時、突然志勇に襟首をがしっと掴まれて口角を下げた。



「なにしてんの、志勇」

「お前も行くんだよ」

「どこに!?こんなひどい顔で誰に会いに行けっていうの?」

「剛がお前に会いたがってる」

「あっ……」



掴んだまま歩くから、散歩を拒否する犬のごとくものすごい形相になりながら反抗したけど、剛さんの名前を聞いて抵抗をやめた。


そうだ、東京に帰って来てまだ剛さんに会ってない。


聞いたところによると、肩を撃たれたけど“休んでいられるか”と無理やり退院して志勇のサポートに専念していたらしい。


ところが傷は徐々に化膿し、それを放置した結果私が帰る2週間前に敗血症一歩手前で入院したそうだ。


もう退院したって言ってたけど大丈夫かな剛さん。



「こんな顔とか言ってる場合じゃないね!今すぐ会いに行かなきゃ」

「……ふっ、お前顔をこっちに向けんな」



決意を胸にしゃきっと背中に力を入れたけど、志勇に顔を笑われてどうもかっこつかない。


剛さんのことだから、自分のことより私の顔見て「どうしたんだその顔!」って心配されそうだな。


なんてことを考えながら車に乗り、凛太朗と一緒に本家に向かった。
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