スカーレットの悪女
「情けねえ、傷が膿んじまって」

「無理して動くからだタコ」

「剛さん髪ふさふさですが?」



反省する剛さん、怪訝な顔をする志勇、そして場を和ませようとボケたのに志勇にガン無視された私。


大阪ではこういう面白みのないボケもみんな懇切丁寧に拾ってくれたからなんかショックが大きい。


大阪がアットホーム過ぎた弊害がまさかこんなところに出てくるとは。



「大事な会合にも顔を出せず……面目ねえ」

「しっかり休んでろ、篤の二の舞にさせてたまるかよ」



剛さんは志勇に叱られると思って拳をぐっと握っていたけど、志勇の口から飛び出たのは意外な言葉だった。


不思議そうに顔を上げた剛さんに対し、志勇は漢らしい精悍な顔つきで笑った。



「剛、お前まで凶弾に倒れるなんて許さねえからな」

「心配せずとも、地獄の果てまでついて行きますよ」



不安そうだった剛さんは、次第に同じような自信に満ちあふれた笑みで返答する。


このふたりの主従関係もまたかっこいいんだよな。


いちオタクとして心に響くものがある。



「づよじざんん……無事でよかった……!」

「あーあ、明日も目が腫れるの確定だな」



気持ちが高ぶったせいで、腫れあがった目から涙があふれていく。


志勇はそんな私を笑いつつ、何か思うところがあったのか、雑な手つきだけど珍しく私の頭を撫でた。
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