スカーレットの悪女
「そんな泣くことじゃねえよ、俺はもう平気だ。これからは実莉と一緒に若と壱華さんを支えてやれるから大丈夫だ」

「それが事情が変わってな」

「……どういうことっすか?」



剛さんは朗らかに笑ったけど、志勇の言葉に眉間にしわを寄せる。


そうか、剛さんは退院したばかりで私の今後を知らないのか。


あえて黙ったままでいると、志勇は剛さんに近づいて説明を始めた。



「は?えっ……実莉だけ大阪に?」



事情を聞いた剛さんは、困惑した様子で私と志勇の顔を何度も見比べる。


最終的に志勇に視点を定めた剛さんは、顔をしかめて口を開いた。



「何考えてんすかあんた!実莉を人質にするなんて!」



さすがみんなのアニキだ、私のために志勇を叱りつけるなんて。


誰かのために怒ることができる男ってかっこいい。
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