スカーレットの悪女
「はぁ、長かったわこの1か月、おかえり実莉」



過密スケジュールの1か月を送った私からすれば大したことないけど大希からすれば長いひと月だったようで、まだ建物内に入っていないのに待ちきれず抱きしめられた。



「今日から実莉と一緒におれるんやな。あー、幸せ」



久々に感じたぬくもりと大希の無邪気に弾んだ声が懐かしくて拒否できず、その腕の中にすっぽり収まる。


やっぱり大希のハグって絶妙に心地いいんだよね。



「通行の邪魔ですよ、門の前でなにしてはるんです」



しばらく身を預けてたら丞さんが前の方でぼやいていた。


大希はハグをやめて「あぁもう……感動の再会台無し」なんて口をとがらせて私の肩を抱き寄せて並んで歩き出したけど、数歩進んだ先ではもう上機嫌に笑っていた。
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