スカーレットの悪女
丞さんはその後手土産を持ってその場を離れる。


しばらくして玄関のドアを開ける音がしたから、どうやら私はこの空間に大希と2人きりにされたらしい。


気にせず大希に背を向けると、後ろから胴を捕まれ、抱き寄せられた。


後ろに強く引き寄せられたものだから後ろにバランスを崩す。


大希はそのまま部屋の中央に置いてあった1人がけのソファに腰かけた。


私は必然的に大希の膝の上に収まり密着する形になった。


驚いて固まったけど、大希はしきりに匂いをかいでいるだけで体には不用意に触れない。



「あー、実莉の匂いがする」

「……私の匂いってどんな感じ?」

「ミルクっぽくて赤ちゃんみたい。眠くなる匂い」

「それはあんたが寝てないからでしょ」



年頃のレディーに対して赤ちゃんの匂いって、それ褒めてんの?


納得いかなくてトゲトゲした物言いになってしまったけど、大希は動じることなく私のうなじを嗅ぐ。


やめてと文句を言って体をねじる。顔だけ大希に向けて睨むと、大希は口を開けて笑った。



「にしてもえらい大人しいな、借りてきた猫みたいやん」

「暴れて欲しいならお望み通り、その綺麗な顔面引っ掻いてあげましょうか?」



やっぱりこの男には舐められてる気がする。


通用するわけないけど猫みたいに手を丸めて爪を見せつけると、大希は目を丸くした。
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