スカーレットの悪女
音のした方向には、どす黒いオーラを背負って私を睨みつける男が1人。


大希を熱烈にしたう厄介オタク、その名も天音雅。


大希のお気に入りの部下だけど、私に風当たりの強い狂犬オタクだ。



「なんや雅、怖い顔して」



雅は大好きな大希の問いかけに答えず、私を睨みつけながら大股で近づいてきた。



「俺は全力で邪魔したるからな!」



そして腰を曲げて顔を突き出し、至近距離で声を張る。


中性的な王子様みたいで美男子なのに、大人気ない脅し方してもったいない。



「雅ぃ、まだ実莉のこと敵対視してるん」

「この1か月平和やったんに、また大希さんとの時間が減るやないですか」

「実莉が来たからって雅のこと蔑ろにするわけないやろ」



大希が虎なら、雅は嫉妬深いことで有名な柴犬かな。


納得がいかないように低く唸る様子はまさに嫉妬するワンコそのもの。


しかし、直接私に危害を加えるようなおバカではないだろうからその辺は安心している。


私を傷つけたらきっと大希が怒るだろうから。


この男は図太い私が傷つかないギリギリのラインを責めているのだろう。


だから私もとことん調子に乗ってやる。



「雅さん髪切りました?その髪型好き」

「お前に褒められたって嬉しくもなんともないわ!」



1か月前はもう少し襟足が長かったけど久々にあったらスッキリしていて、前髪がセンターパートになって色気が増してる。


色気あるのいいなと思って褒めたらやっぱり噛み付かれたけど、私とよく似た熱烈オタクを見るとちょっと元気が出た。
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