スカーレットの悪女
組の車で出かけたのは大阪の高級歓楽街、北新地。


平日だし昼間だから人通りはぼちぼち。この時間に空いてるお店あるのかなと思ったら、看板もなくまだのれんがかかっていないお店の前に車を停めた。


車から降りると、大希は扉を開いた。



「へい、大ちゃんいらっしゃい」

「その呼び方やめんかい」



店には出迎えた男性と私たち以外はいないようだった。


カウンター席のみの店内には板前姿で白髪の背が低い人がいて、大希を見て“たいちゃん”なんて呼んでいた。


西雲会の若頭をあだ名で呼ぶなんて、昔馴染みか元組員の人かな。



「連絡受けてびっくりしたわ。女の子この店連れてきたことないのに。
いつものタイプと違うやん!年上キラーの大ちゃんがどうしたん!?」

「ええから美味い寿司食わしてやって」



詮索を入れる前に笑顔でぺらぺらと大希の女遍歴を暴露するおじさん。やっぱり元組員だろうか。



「……どういったご関係で?」



尋ねると、大希は少しめんどくさそうにおじさんを見つめた。



「昔から世話になってるおっちゃん」

「元組員、とかではなく?」

「カタギやで。組のもんやったら俺にこんな生意気な口叩けんやろ」

「せやでお嬢ちゃん、こんな口の軽い男が極道なんてあかんで」



自らを口が軽いと語ったその人は、自分はここの店主で大希を子どもの時から知っているとその後明かした。


大希って地域の人に可愛がられてきたタイプなんだろうな。そう思いながらお腹の虫がぐるぐる鳴き始めたため、待ちわびたお寿司をいただくことにした。
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