スカーレットの悪女
「……誰?」

「お前が相川壱華か」



漆黒の瞳が壱華を捉え、一瞬、壱華の腕の力が抜けた。


だけどすぐ表情を改めて止血を再開させる。


顔だけ志勇に向けて、壱華は口を開いた。



「お願いします、実莉を助けて」

「刺されたのか、誰に?」

「縁を切ったはずの姉が押し入ってきて……実莉はわたしをかばって刺されたんです!早く助けて……」



助けてと言ったその瞬間、壱華の表情から希望が消え失せる。


志勇が無関心な目を私を見下ろしていたから。


どうやら、この男は助けてくれるつもりはないらしい。


ああそうだ、荒瀬志勇は血も涙もない極道の人間。


見返りもなく、こんな小娘を救ってくれない。


すると、壱華が私のもとから離れて、志勇の前にひざまずいた。


……ねえ、何をするつもり?
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