スカーレットの悪女
壱華の物語は、“闇色のシンデレラ”はハッピーエンドを迎えた。


あとは私が居なくとも志勇が幸せにしてくれると思うけど、何か大切なことを忘れている気がする。


続編の始まりは、壱華と志勇が結婚した1ヶ月後、壱華の懐妊が発覚した場面からスタートする。


……壱華って、妊娠したあとどうなるんだっけ。


「あぁっ!!」


不意に前世の記憶が蘇る。私は事の重大さを思い出し、大きな声をリビングに響かせた。



「びっくりしたあ、急にでかい声出すやん。東京に忘れ物でもした?」



大希は元々大きな目をさらに丸くして私を凝視している。



「いや、違う、その……急に思い出して」

「何を?うろたえてどないしたん」

「いや、なんでもない」

「なんやねん」



そうだ、壱華の妊娠後は順風満帆ではなかった。


妊娠初期は重いつわりに悩まされ、安定期に入って症状が落ち着いた思えば事件が起こる。


壱華が参加した組幹部が集まるパーティーで、志勇に陶酔していたお嬢の妬みを買って心身ともに傷つけられるのだ。


よりによって妊娠中の壱華を攫って殺害しようと企む、人間の所業とは思えない畜生風情に壱華を傷つけさせてたまるか。
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