スカーレットの悪女
思い出したのが今でもまだ遅くない。対策すれば未然に防げる。


ここが壱華に待ち受ける試練の最後の難関だ。絶対に阻止しないと。



「実莉、顔が青ざめてない?ほんまに大丈夫なん?」

「大希、私月イチは絶対東京に帰るからね!」



私は強い意志を胸に大希を見上げた。


大希は私の顔をまじまじと見つめて健康チェックをしながら首だけ縦に振った。



「ご自由に。実莉が大阪に移住してくれたからこれ以上の束縛はせんよ」

「荒瀬で壱華が参加する集会とかあったら、万が一に備えて安全のために絶対参加するからね」

「ええよ、“覇王の花嫁”が隣におったら誰も手出しできんやろ」

「もし今後壱華が妊娠してつわりがひどかったりしたら駆けつけるからね!」


嬉しそうに花嫁と口にした大希を思いっきり無視して自分の意見を通す。


私だったら無視したらムッとしそうなのに、大希は笑みを浮かべて頭を撫でた。



「ほんまお姉ちゃん想いのええ子やな」



どうやら私のわがままを全て受け入れてくれるらしい。


最初は厄介な男だと思ったけど、味方になれば頼もしいものだ。


ツンツンしてばっかりだし、たまには大希の喜ぶことをしてあげよう。


試しにありがとうと元気にお礼を言いながら抱きついてみた。



「あぁもう、急にかわいいことするやん。甘え方が猫みたいやな、よーしよしよし!」



大希は声を弾ませて私の頭をわしゃわしゃ撫でる。


なんでだろう、絶対面識ないのに撫で方がパパに似ている。


だからこうやって触れ合いたいと思っちゃうんだよな。


嫌じゃないからしばらくひっついたままでいると、どこからともなく大きなため息が聞こえた。


出たこの感じ、絶対雅でしょ。
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