スカーレットの悪女
「まーたイチャイチャしてますやん」



声がしたのは後方から。振り返ると殺気を放つ雅が壁によりかかって立っていた。


出た、この人しょっちゅう大希の部屋に来るんだから。


嫁に嫌われるタイプの姑かよ。



「雅、はよ慣れた方が自分のためやで」

「無理、絶対無理。俺の憧れの大希さんがこんなぽっと出に奪われるなんて許さん」



雅は知れば知るほど私にそっくりだ。


推しに恋人ができるってことは、盗られて奪いさられる感覚なんだよね、分かるよ。



「まあまあ、夜は2人で飲み行こうや」



私を睨みつけたままの雅だけど、大希がそう言って肩を組んだから光の速さで雅は顔を上げた。



「よっしゃあ!見たかクソガキ!」

「雅、口が悪いわ。そんな子に育てたつもりないんやけど」



雅は勝ち誇った顔で拳を丸めて笑う。


突如出現した本性に大希は驚いたけど、雅は嬉しくてそれどころじゃないみたい。



「だって久々ですもん、サシで飲み行けるの」



口は悪くても、はしゃぐ姿は確かにかわいい。


大希は「ほんまに俺のこと好きやな」と雅の頭を撫でていた。


雅は私を見つつふんと鼻を鳴らして大人気なくドヤ顔。


やだな、私って周りから見たらこんなわがままな駄々っ子に見えてたんだ。
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