スカーレットの悪女
「あ?なんやその顔」

「いえ別に……」



ショックを受けた顔が雅には反抗的に見えたらしくまた噛みついてきた。


私は大人しく身を引いて、自室になる予定の部屋に向かい荷解きを再開することにした。



「実莉さんの方が大人ですね」

「ひぇっ!た、丞さん!?気配消して近づかないでください!」


すると背後から突然丞さんの声がして、相変わらずの気配のなさに私は跳ね上がった。


せめてノックをするなりして欲しい。



「実莉さんはリアクションがおもろいですから驚かせるのが楽しいんですよ」

「真顔で言わないでください怖いです」



西雲では良心的だと思っていたけどそうでもないっぽい。


こういう意外な一面を見せてくれたということは、それだけ心を開いてくれてるんだろうけど心臓に悪い。



「そんなことより、案外余裕ですね、雅に歯向かうと思っとったのに」

「うーん、なんとなく雅さんの気持ちが分かるから」



だけど、丞さんは私のこと分かってないみたい。


余裕に見えるのは裏を返せば関心がないのだ。



「そうですね、おふたりはよく似てはるんで、仲良くなれば無敵と思うんですけど。
雅はああ見えて大希より単純ですから」



黙々と作業していると、丞さんはそう言い残して私の部屋を去った。


要するに大希を攻略できたんだから次は雅をターゲットにしろと?



「まったく、ゲームじゃないんだから」



私はぶつぶつ呟いてなんだかんだ雅の攻略法を考えつつ、半日かけて引越し作業を終わらせた。
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