スカーレットの悪女
「ふう、すっきりした」



まだ3月だというのに汗だくになりながら作業したため、大希が帰ってくる前にお風呂に入った。


バスルームは私が越してくる前にリフォームしたらしく、清潔で快適だから今後のお風呂時間が楽しくなりそうだ。


ところで、約束通り雅と飲みに行った大希は22時を過ぎても帰ってこない。


出かけたの17時だったよね、よく男同士のサシ飲みで5時間も一緒にいられるな。



「まだ帰ってこない……どこで寝たらいいんだろう」



大希が帰ってこないと困る。なぜなら今日寝る場所を聞き忘れていたからだ。


私の部屋にベッドらしきものはなくて、大希には事前に寝床はこっちで準備するからと聞いていた。


連絡しても既読つかないし。飲んだくれているんだろう。


健康優良児の私はいつも23時には布団にくるまってうとうとしているから、そろそろ眠気を催す時間だ。



「ただいま、実莉おるー?」



リビングのソファで船を漕いでいたの23時ちょうど。


大希の声が玄関から聞こえて、目を擦りながら出迎えた。



「……おかえり」

「帰ったらおかえりって言ってくれるの幸せ〜」



酒が入っても特に態度が変わらない大希。顔色も全く変わってないからお酒には強いんだろう。


眠気に抗いながら分析していると「すっぴんかわいい」などと言いながら大希は片手で私の頬を包むように触れていた。



「お酒臭いから触らないで。私もう寝る準備万全なの」

「俺が帰ってくるまで起きてくれとったん?健気なあ」

「違う、どこで寝たらいいのか分からなかったから」



その手を払い除ける元気はないから、目をつぶって挟まれたまま会話を続ける。


ところが寝る場所について口に出すと手を離した。


不思議に思って眠いまぶたをこじ開けると、大希はきょとんとした顔で私を見下ろしていた。



「え?俺の部屋に決まってるやん」

「は?」

「実莉が来るから、俺の部屋のベッドキングサイズに変えてん。広くて快適やで」



……待って、意味がわかんない。


私の部屋はあるのに、同じベッドで寝なきゃいけないの!?
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