スカーレットの悪女
「大希、いつまで寝てはるおつもりで?」

「んん、あれ、赤星……」



誰かに揺さぶられた気がして、掠れた大希の声に目を覚ました。


あれ、ついさっきまで夜だったはずなのに部屋の中には燦々と朝日が差し込んでいる。


嘘、もう朝?爆睡だったんだけど。



「え、朝?ほんまに!?」



大希も私と同じような反応をして、起き上がるついでに私も抱き起こした。


ベットの近くには丞さんが腕を組んで立っていて「やっと起きた」とため息混じりに呟いた。
どうやら大希は寝坊したらしい。



「嘘やん、一回も起きひんかった」

「珍しいですね、頻尿で起きるおっさんのごとく眠りが浅いのに」



丞さんは失礼な例えをしたけど、大希は頭が回ってないようで眠そうに目をしぱしぱ。


その様子をなんとなく見ていると目が合った。



「あかん、実莉抱っこして寝たら爆睡してしもうた」



すると私を巻き込んでもう一度ベッドに横になる。



「んわー、仕事に行きたくない」



間抜けな声を上げてひしっと抱きついてきた大希。


その気持ちは分からないこともないけど、こんなにダラダラしていいのかな。



「えっちなことしたかった〜、残念」



大希の腕の中が余りに心地よくて動きなくなかったけど、いかがわしい発言に飛び上がって丞さんの後ろに隠れた。



「いいから早く仕事行きなさいよ!」

「そうですよ、側近に気色悪いもん見せんといてください」

「お前どっちの味方やねん」



寝起きでキレのないツッコミを入れながら、大希はあくびをして立ち上がって、のそのそ部屋を出ていった。
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