スカーレットの悪女
「実莉、いってらっしゃいのチューは?」



私はまだ起きる必要はないからふかふかベッドで優雅に二度寝をかまそうと思った。しかし大希に揺さぶられて目を覚ますと大希の顔面が目の前にあった。


身支度をして整った綺麗な顔だから耐えられたけど、これが小汚いおっさんだったら顔面の圧に耐えられなくて殴ってるところだわ。


「……キモイ」


でもいい歳の男がチューをねだるのはキモイ。


ふて寝してやると布団を掴んだけど押さえつけられてキスをせがまれた。



「しつこい!」

「あいたっ!噛み付いた!」



もし壱華だったら優しいからキスしてあげただろう。しかし寝起きで機嫌の悪い私にはどんな美貌だろうと無効だ。


下唇に噛み付くと、大希は唇を押さえてのけぞり私から離れた。


リアクション大袈裟すぎ。甘噛みなんだけど。



「見た、赤星!?実莉が俺に噛み付いた!」

「ナイスです実莉さん。シンプルにきっしょいことすんなあと思ってたんで」

「ありがとう丞さん、じゃあおやすみ」

「だからなんで実莉の肩持つねん!」



私が主に噛み付こうが、覇王の犬はいつだって辛口。


おもしろい主従関係だなと思いつつ、春のぽかぽか陽気の中もう一度夢の世界へ足をつっこんだ。
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