スカーレットの悪女
「お前まさか、二度寝する気ちゃうか」



そのはずが、男の低い声がして私は目を開いた。


なんかそんな気がしてたけど、半目の状態で般若のような顔の雅とご対面してしまった。


まったく、私のこと嫌いなら放っておけばいいのに。



「その通りですけどなんの御用ですか?」



私は布団の中でもぞもぞしながら雅の顔を見つめた。




「今日お前の世話係頼まれてん。最っ悪なことに」



世話係?絶対いちゃもんつけに来ただけでしょ。


だいたい幹部が小娘の世話係なんてするはずないし。



「ほれちんちくりん、はよ起きや」



完全に見下されてるけど、だめだ頭回らなくて言い返すのもめんどくさい。



「お世話って何するの?」

「お前が家の事ちゃんとするか監視する」

「家事ってこと?」



布団が恋しいけど仕方ない、無視してもだるそうだから起きるか。



「お前チヤホヤされて家事とかできなさそうな顔してるもんな」

「嫌味言いに来ただけなら帰ってください」

「ちゃうねん、大希さんがお前と朝飯一緒に食えって言うから仕方なく……仕方なく起こしに来たんや」



雅は納得のいかない様子で、持ち前の王子フェイスをこれでもかとしわくちゃにする。


だから、そんなに嫌なら大希の命令聞かなきゃいいのに。



「分かった、一緒に作るね」

「……クソッ、なんでお前なんかと」



雅は拳を握って悔しそうに毒を吐く。何を言っても逆効果な気がするから、私は何も反応せずパジャマのままキッチンに向かった。
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