スカーレットの悪女
「おいしい?」



フレンチトーストとサラダとスープ。私の中では普遍的なラインナップの朝食を作って出してみた。


特にフレンチトーストは壱華のお墨付きだから間違いないはず。



「まずいわこんなの食えへん」



雅はあまのじゃくなのか、バクバク食べてるくせに睨んできた。


さすがにもう慣れてきちゃって、意外と食べ方ワイルドだなってことくらいしか思わなかった。



「って文句言う予定やったのにムカつく」



ほらやっぱりおいしいんじゃん、反抗期の子どもみたいなこと言うけどさ。



「ドヤ顔やめぇや、しばいたろか」


嬉しくて目を輝かせるとすぐバレた。


おっかないこと言われたけど、関西人の“しばく”は冗談らしいから真に受けないでおく。



「お前、策士なのに単純で変なやっちゃな」



続いて変人認定されたけど、これはいい流れだ。


この世界で仲良くなった人はみんな最初私のことを変なやつだと言った。


でも裏を返せば興味を引かれるきっかけになるから、雅もこのまま私に興味を抱いて欲しい。


盲信狂犬オタクの彼には厳しいだろうけど、どうせひとつ屋根の下で過ごすなら仲良くしたいもんだ。


雅はずっと険しい顔をしてるくせに、朝食を食べる手は止めなかった。
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