スカーレットの悪女
「うむ、変人とはよく言われる」



ちょっとは警戒を解いてくれたかな。私は胸を張って座ったまま腰に手を当てた。



「嫌いや、そうやって人の懐に入り込むヤツ」



しかし面と向かって嫌いと言われてしまったので分かりやすく肩を落とす。


うーむ、仲良くなれそうな気がしたけど手強いな。



「雅さんってさ、大希のどこが好きなの?」



だから雅の好きそうな話題を口に出すことにした。


しかし雅は大好きな大希の名前を出されても眉毛ひとつ動かさない。


あれ、なんか感触悪いな。



「私、いまいちあの人のこと理解できないから語ってほしい」



オタクなら語るのは得意だろう。ところが雅は机に両手をつき立ち上がった。


逆効果だったかな、無視されちゃった。


でもお皿が空っぽだからそれだけでも気分がいい。ふふん、おいしかったんだな。


雅は食べるだけ食べて部屋を出ていってしまい、私は使った食器をキッチンに持って行って洗った。



「ほれ、プレゼン資料」



ところが数分後、雅は辞書かと見間違うほどの分厚いファイルを持って私の前に再び現れた。
< 663 / 809 >

この作品をシェア

pagetop