スカーレットの悪女
ちょうどタオルで手を拭いていた私は、驚いて床にタオルを落とした。


なんだその凶器になりうる分厚さは。



「なんの!?」

「大希さんの資料に決まっとるやろアホが!」



なんとそれは大希についての資料らしい。信じられない。ここまでの狂信オタクだったとは!


資料って何!?そんな分厚いアルバム親でも持ってないから!



「分厚いすぎない!?バカなの!?」

「うっさいわシスコンバカ。お前も似たようなもんやろ」

「いや、絶対雅さんの方が重いって」



私ってこの男と同じレベルなのか?混乱しながらドンとテーブルに置かれた資料なるものを恐る恐るめくってみる。


最初のページには満面の笑みの大希の写真が収められていた。


いい写真だ、胡散臭さがなくて純粋な笑顔。



「勝手に見んなや、俺が説明するんやから」



勝手に見ていいと思ったけど、順序があるらしく雅は私の手からファイルを取り上げた。


そこから1時間、みっちりノンストップで大希講座を受ける羽目になり、オタクに対して軽率に推しを語れと言い放ってしまったことを心底後悔した。
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