スカーレットの悪女
「いやぁ、すまんすまん。えらい可愛らしい子や思うて」



身長は大希より低いけど、恰幅がいいから同じくらいに見える。


白髪混じりの前髪を後ろに流してラフめなオールバックにしている。


眉はつり気味で、目は奥二重だけどギラついていかにもヤクザって感じの胡散臭さ。


その男は笑みを浮かべたまま私を上から見つめていた。


つまりこの男が大希の父親──原作で一度も姿を現さなかった西雲会の統帥。


本家に姿を現さないということは、普段は別の場所に住んでいるのだろうか。



「万が一の為に雲隠れしてたけど、大体安定してきたからちょいちょい本家戻るわ」



ん?そういえば今日出迎えの声が大きかったのって、もしかしてこの人が久々に本家に帰ってきたから!?


道理でみんな張り切って掃除してると思った。



「大希、荷物置くから鍵貸して」

「は?親父の部屋もうないけど」

「遅めの反抗期!?まだ現役なんやから追い出さんで」



一度私を視野に入れた統帥だったけど、もう興味がないみたいで大希に視線を向けた。



「実莉の部屋になってん」



しかし、大希が私を後ろから立ち上がらせたことでまた私を見た。


今度は目を見開いてまるで金剛力士像みたい。


ただ驚いてるだけなのに怖すぎでしょ。西雲の人間、荒瀬より顔の迫力あるって。
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