スカーレットの悪女
魔人こと大希の父親は、私と目を合わせて微笑んだ。


目尻にシワが寄ってずいぶん雰囲気が変わった。


でも大希と違って顔がいかついから圧がすごい。



「実莉ちゃんって言うんやろ、ウチの大希のことよろしゅうな」



さすがに情報が彼の元に入っていたらしく、名指しで挨拶をされた。


しかし大希は父親を横目で見て渋い顔をしている。



「挨拶するなら名乗らんかい」

「どうも昂大(たかひろ)です〜、昂るに大きいでたかひろって読みます〜、51歳のナイスガイです」



息子の言葉に彼は腰を曲げて漫才師よろしく陽気に挨拶。


大阪の人ってノリがいいけど、ヤクザの組長でもこういう感じなんだ。


警戒しないといけないのに気が抜ける。


どっちが本当の顔なのか分からないの怖いな。



「ナイスガイとか死語やろ」



でも、大希が割と冷たくツッコミ入れてるけど怒らないから懐は広そう。


こんなにボケるお父さんなんだから、大希のツッコミの腕は父親によって磨かれたんだろうな。


父親に丞のアニキ、周りがボケばっかりで大変だな。


丞さんはボケとツッコミの両刀だけどさ。
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