スカーレットの悪女
「あー、どっと疲れた」



部屋に戻ってきた大希は、リビングに入るや否や背後から覆い被さるように抱きしめてきた。


相変わらず行動の読めない男だ。



「こっちのセリフなんだけど、ていうか重い!」



ただハグしてくるくらい文句言わないが体重差は考えて欲しいものだ。


重いと声を張ると大希は力をゆるめて、今度は腰を曲げて私の耳元に口を寄せる。


息がかかって少しくすぐったかった。



「今日は一緒に風呂入る?」



すると、まるでいつも一緒に入ってるかのような口振りで耳元で囁いた。


そんな優しい口調で言っても通用しないって分かってるくせに。



「絶対イヤ、お風呂は私のプライベート空間」

「しゃーない、徐々に侵食するか」

「侵食ってなに!?覗きとか許さないからね!」

「んなことするわけないやん。実莉に嫌われたくないもん」

「ふん、どうだか」

「全然信用されてないやん」

「そりゃあ堂々とセクハラするような人に言われてもね」

「最近はしてへんやろ、ちゃんと許可制やん」



会話を続けながら、私たちは本当によく喋るなと思った。


寝る時とお風呂以外会話のラリーが永遠と続いてる。おかげで退屈しないけどさ。
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