スカーレットの悪女
「どないしたん、なんで黙るん。そうやろ?俺最近は触ったりしてへんやん。めっちゃ我慢してんやで」

「ちょっと黙って、人の思考に入ってこないで」



大希は駄弁ることに慣れすぎて、一瞬でも私が黙ると不思議そうな顔をする。



「変なタイミングで考え事入るやん」

「ずーっと喋ってるから考える余裕もないんだってば」
「確かに。実莉とお喋りしてると余計なこと考えんでええもんな、毎日楽しいわ〜」



そういえば私もいつの間にか、地元を離れてさみしい気持ちも吹き飛んだ。ホームシックもどこ吹く風だ。


大希は語尾を伸ばして茶化してふざけてるのかと思えば、満面の笑みで歯を見せて笑っている。


図体でかいくせに笑顔はかわいいとかなんなの。まったく憎めない男だ。



「あとは実莉が俺のこと好きとか愛情表現してくれるようになったらもっと幸せやな〜」

「私がそんな簡単に懐くと思わないでよね」

「生意気なのもええなあ」



最初は私のこと、利口ぶったガキとか言ってたくせに今では生意気な部分すら愛しいと思ってしまうらしい。


盲目すぎて手に負えないけど、ここまで一途な大希には感心する。


その日は別々でお風呂に入るまで喋り続けたのに、会話が尽きなくて寝る時間が遅くなった。
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