スカーレットの悪女
「あー、この谷間に住みたい」



セクハラ発言も眠すぎてツッコミを入れる気力がない。


これ以上何かちょっかいかけてくるなら突き飛ばすけど、ただ胸に顔を埋めてるだけだし別にいいや。


宙に浮いていた手を大希の頭に乗せ、くるくるとしたパーマ独特の手触りのいい髪を撫でた。



「頭撫でられるのあかん……寝る……」



大希はさっきまで大きな目を見開いて私を観察していたくせに、頭を撫でていると次第に口数が減った。


私のこと赤ちゃんとか言ったけど、抱きしめただけで寝るなんて大希も存外子どもっぽい。


だけど確かに、密着したことで生まれるえもいえぬ多幸感は何者にも変え難い。


互いに意識を手放した後も、私たちはずっと抱き合って眠っていた。



「また爆睡やん。実莉がモチモチで子ども体温のせいや」



翌朝、大希の声に目が覚めた。どうやら2人とも朝までぐっすり眠れたらしい。


しかし、目を開けると大希は眉間に皺を寄せて不服そうな顔をしていた。



「寝不足解消されて良かったじゃん」

「嫌やあ、不完全燃焼」



そういえば、普段は寝る前に女を抱いて体力消耗させてるとか言ってたっけ。


私と寝ればその必要性がないみたいだけど、自分なりのルーティンが崩れてるから納得いかないんだろうか。
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