スカーレットの悪女
「不完全燃焼とか言うけど、もうアラサーだからそんな元気もないでしょ」
「あ?なんや煽ってるん」
少しいじわるを言うと、大希は声音を変えて私の腰を引き寄せる。
体が密着する形になって、背中に何やら硬いものが当たって絶句した。
「ぎゃああ!なにコレ!」
「暴れても俺に力で敵わんくらい知ってるやろ」
逃げ出そうとしても、大希の腕力で押さえつけられて逃げ出せない。
まずい、からかったつもりが男のプライドを逆撫でしてしまったようだ。
「分かった、十分元気なのは伝わったから!お願い離して!」
「抵抗されると燃えるわあ、どうしてやろうか」
距離を取りたいはずがさらに腰を押し付けられ、想像していたよりはるかに巨大なそれに背筋が凍るような感覚がした。
まずい、油断していた。朝っぱらから貞操の危機とか勘弁してくれ!
「いった!なにすんねん」
とその時、救いの手が差し伸べられた。
大希の声が聞こえたと思うと、気がついたら大希は布団に包まれたままベッドの外に放り出されていた。
どうやら誰かが大希に天誅を下し、暴力で解決してくれたらしい。
私はお礼を言おうとベッドから起き上がった。しかしその後すぐに口をつぐんだ。
「朝から盛らんでください、気っ色悪い」
なぜなら、無表情キャラのはずの丞さんが、見たことの無いほどの怒りを滲ませた目つきで大希を睨んでいたから。