スカーレットの悪女
「はぁぁ、疲れた。あの鬼部下人遣い荒いねん、俺に恨みでもあるんか」



仕事が終わって愚痴りながら帰ってきた大希。


リビングのソファでくつろぎながら振り返ると、手で前髪をくしゃと振り乱し、ネクタイをゆるめる大希の姿が目に入った。


なんか大希って疲れたら色気増すな。そうか、口数が減って表情の変動が少なくなるからだ。



「恨みは多少あるんじゃない?」

「あんな生き生きとスパイ生活楽しんどって?」

「確かに、刑事時代の丞さん楽しそうだった」

「せやろ、あいつ刑事の方が向いてんちゃう?で、なんやぎょうさん菓子折りあるけど実莉は今日何してたん」



大希は私の頭に手を置き、ソファの前のローテーブルに置かれた開封済みのお菓子の詰め合わせセットを見つめる。



「今日は部屋の窓拭きと床掃除と、昂大さんとお茶会」

「毎日文句言わず家事してええ子やなぁ……ってあの親父、部屋に上がり込んできたん!?俺になんの断りもなしで!?」



いつもと違う大希にドキッとしたけど、驚いたらすぐ通常運転の大希に戻った。


ほんとこの人、表情コロコロ変わるよね。



「手土産の高級山盛りお菓子に釣られて……」

「おやつに釣られたら知らん人に着いてったらあかんやろ!」

「でもおいしかった」



知らん人って、あんたの父親でしょ。そんなツッコミは置いといてにんまりと笑うと大希はため息をついた。
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