スカーレットの悪女
「なんもされんかった?大丈夫?」

「志勇のお父さんより100倍親切」

「ああ……あのおやっさんに慣れてたらウチの親父なんて攻略簡単か」



さすがに大希の父親まで攻略対象だとは思ってないけど、敵意はない様子だったから受け入れたまでだ。



「けど肝冷えたわ。ウチの親父、俺の女関係なんてまったく興味なかったくせに。
明日雨降るかなぁ、なんとなく体も冷えて来たから先に風呂入ってくるわ」

「分かった、お風呂入ってる間にご飯用意しておくね」



大希は体をブルブルと震わせて下唇を突き出す。


変な顔だなと思いながら夜ご飯の準備をするかと立ち上がると、急に視線を感じた。


大希はその大きな目で私を凝視すると、その後目をつぶって天井を見上げた。



「何、急に変な行動して」

「幸せを噛み締めてるんや」

「……幸せ?」

「家帰ったら好きな子がおってその子の手料理食べれるなんて、幸せな家庭そのものやん」

「いいから早く入ってきてよ、私お腹すいてるの」

「待っててくれたん!?ああもう、愛おしいなぁ!」

「だから入ってきなさいってば!」



行動の読めない大希は両腕を広げてハグをしたいようだ。


しかしこっちは腹ぺこなんだっての!早く入って来い。


歯を見せて威嚇すると大希は目を丸くして「今日は実莉も厳しいわ……」なんてブツブツ呟きながらようやくリビングを出ていった。
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