スカーレットの悪女
「え?」

「どうしたらええ?実莉が嫌がることはしたくないから教えて」



ところが大希はここでも期待を裏切る。



「はっ……もしや触られるのも嫌?一緒に寝たらあかんの?」



慌てたように背中をさすったり手を離したり。


数々の逆境を乗り越えて怖いもの無しの大希がこんな小娘のご機嫌を一生懸命うかがっている。


変な男だ。私は既に大希の所有物なのに。



「別にそれはいいけど……頭痛と腰痛があるから痛み止めが欲しい。あと、ホルモンの影響で胸も張ってて触ると痛いから絶対触らないで」



大希はなるほど、と呟きつつ私から離れ、立ち上がってドアに足を向ける。



「難儀やな、女の子の体って。ちょっと待ってな」



そのまま部屋を出ていくと、自室に向かったようでそっちからガサゴソと音が聞こえた。


しばらくして戻ってきた大希は片手に水の入ったコップ、もう片方に錠剤のシートをいくつか持っていた。



「どれがいい?こっちが普通の市販薬で、これは痛み止め最大量に入ってるやつ。指詰めた奴がよう飲んでるでこれ」



薬を持ってきてくれたのはありがたいが、笑えないヤクザジョークを織り交ぜるのはやめていただきたい。


ツッコミせず大人しく市販薬をいただいて再び布団に潜り込むと「あかん実莉がツッコむ気力もないなんて」などと大袈裟に驚いて余計心配している様子だった。
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