スカーレットの悪女
薬をもらい、水を口に含んで喉奥に流し込む。



「くすり飲んだ?飲んだら横になって」



大希はコップを取り上げ私を寝かせると、布団をかけてポンポンと叩く。


それからすぐ立ち上がって部屋を出ていき、すぐ戻ってきて布団に潜り込んできた。



「こうやってぎゅってするのは大丈夫?」

「……うん」



そして体を寄せて優しく抱きしめ、大きな手で私の頭を撫でる。


変な男だ。なんの価値もない女に熱を上げて惚れ込んで。


早く飽きてしまえばいいと願う一方で、このぬくもりを手離したくないと思う自分もいる。


そうか、飽きられたら怖いから私は頑なにこの男に心を開くことができないんだ。


私たちの出会いは運命ではない。一種のバグだからいつか終わりが来るかもしれないと怯えている。
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