スカーレットの悪女
「なんで泣いてるん?これもホルモンの影響?」



不意に涙が頬を伝い、大希にバレないように我慢していたけど我慢するあまり肩を震わせていた。


バレたのに大希はいつもの調子でおちょくったりはせず、ただなだめるように穏やかな口調で話しかける。



「分かんない」

「そっか、なら存分に泣いて。俺はここにおるから」



不完全で曖昧な私の存在を認めるように抱きしめる大希。


この瞬間、頑なに拒んでいた扉をこじ開けられてしまったと感じた。



「どーせ今まで誰にも愚痴を吐き出せんかったんやろ。俺には全部ぶつけてええから」



ダメだこれ以上はこの私が大希に惚れ込んでしまう。


取り返しがつかなくなる前にどうにか嫌われるか飽きられるかして東京に戻してもらわないと。


この男の危険性は十二分に知っているのに、今はこのぬくもりが心地よくてすがりつきたい。


そうこう考えているうちに、大希の腕の中であっという間に眠りについてしまった。
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