スカーレットの悪女
「何作ったの?」

「みそ汁と卵焼き作っただけやで。でも今日の卵焼きは自信作やわ。見て、きれーな形で焦げ目もない」



満面の笑みで卵焼きの出来を報告する大希に困惑した。


望月大希という人間を知れば知るほど、スパダリ過ぎて困ってる。



「話が違う……」



思わず口から漏れ出た驚愕の声。



「は、何が?」

「なんでもない」



独り言を隠すように大希の腰に手を回して抱きつく。


なんなんだこの男。ヤクザにしてはなんでもそつなくこなし過ぎ。


本来脇役のくせに、主人公級に補正かかってるんだよ。こんな完璧な人間がいてたまるか。


理想の男性像すぎてぐうの音も出ない。



「昨日から甘えたやなぁ、まだ体調悪いん?」

「そういうことにしとく」



ぎゅっと抱き着いて怒りに似た昂りを押さえていると大希は私の頭を撫でる。


まずいぞこの状況。利用してやるつもりが私が骨抜きにされてしまう。


どうにかしないと、このまま一心に覇王の愛を受けていると即落ちルート必至だ。


壱華の安全が確保できるまで──せめて第一子誕生までは恋愛にうつつを抜かしてる場合じゃない。


冷静になりたい時間が欲しい私は、苦肉の策で最後のあがきとも思える作戦を考えつき、実行することにした
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