スカーレットの悪女
「無理、マジで無理。俺が耐えられん1週間にして」

「はあ?いつでも会いに行っていいって言ったじゃん」



大希はブンブン首を振りながら腕も連動して私の体を揺さぶる。子どもの癇癪かよ。


とてもじゃないけどヤクザの若頭とは思えない。



「いきなり1か月は聞いてへんわ!俺がもたんって。実莉不足で部下に当たり散らしてもええんか!」

「上司として最低だわ」

「お願い実莉、後生やから!」



壱華が1番だからそばにいてあげたいかど、壱華のことだから私が行ったら逆に気を使うかな。


じゃあとりあえず様子見で1週間か。



「はあ……分かった1週間ね」

「ありがと実莉大好き〜!」



条件を飲むとアラサーとは思えないオーバーリアクションで再び抱きしめる。


それからキツツキみたいに何度も頬にキスをしてきて、ウザったいから顔を押しのけた。



「あっはは、出た、チュー嫌がる猫ちゃんや」

「壱華と話したいのに邪魔しないでってば!」



私たちにとっては日常的なやり取り。


だけどその様子を聞いていた壱華は楽しそうに笑い、近くにいるであろう志勇は「とんでもねえ腑抜けようだな、キモっ」とドン引きしている様子。


志勇も壱華の前ではかなり腑抜けてるのに自覚ないのかよ。私も志勇に対してちょっと引いた。
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