スカーレットの悪女
「不安そうな顔してどうしたん」



大希は私の頬に手を差し伸べ首をかしげる。



「本当に私のこと好き?手放さないでね」



大きな手に包み込まれるとともに不安が声に出た。


大希は驚いたように目を丸くすると、次に目を細めて片方の口角を上げた。



「それ、俺のセリフなんやけど」



笑った瞬間腕を引かれバランスを崩し、視界が大きく動いた。


ベッドのスプリングの振動を背で感じ、気がつけば組み敷かれていた。



「好きやからどんどん歯止め効かんくなってんねん。最近全然余裕ないわ、どうしてくれるん」



覆い被さって抱きしめられ、鼻で笑うような失笑交じりの声が耳元で聞こえる。


余裕がないようには見えなかった。むしろ丞さんから大希が寝れるようになって安定してきたと聞いていたから。


さすがは本心を隠すのが私以上に巧みな男だ。



「あのさあ、」



しばらく黙って抱きしめられていたけど、大希は腕を離して枕元に手を着き、私を見下ろす。



「東京行く前に、籍を入れるか身体許すかどっちか選んでって言ったら、どっち取る?」
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