スカーレットの悪女
2時間ほど二度寝して、起きたのは9時頃。


壱華のいる荒瀬組に帰る準備を急ピッチで進めていた。


大希は今日はまだ家の中にいて、昨日と同じ体勢でキャリーケースに荷物を詰め込む私を眺めていた。



「飛行機で帰るん?」

「新幹線で帰るよ、羽田より東京駅から向かった方が早いし」

「新幹線なら護衛付けるためにグリーン車にして欲しいんやけど予約取ったん?」

「13時の予約もう取ってるよ」



時刻を伝えると大希はもうすぐやん、と呟いて仰向けになった。



「はぁ……抱かんかったらよかった」



そして特大のため息をついて私の注意を誘う。


構って欲しいんだな。仕方なく振り返ると大希は苦悶の表情で文字通り頭を抱えていた。


リアクションがいちいち大袈裟なんだよね。関西人の特色なのか、単に大希の個性なのか。



「なんで?」

「これから1週間、実莉不足で耐えられへん、どないしよ」

「抱けたから満足できたんじゃないの?」

「1回で満足できるわけないやん。もっと欲しくなるもんやろ。人間の欲って計り知れんから」



不満そうではあっても全ての身振りが大きくてが浮き足立っている。多少は欲が解消できたみたいに見えるけど、まだ足りないんだ。


アラサーでこんなに性欲旺盛って、全盛期はさぞプレイボーイだったんだろう。


「どっちにしろ生理くるからできないよ」

「そんな状態で東京行って大丈夫なん!?」



そんな元遊び人が、自身のタイプとは正反対の年下で童顔の女に熱中している。


私の発する言葉、一語一句に反応する様子が愛情の度合いを物語っていた。
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