スカーレットの悪女
「大丈夫、新幹線乗って座ってるだけだし、荒瀬に行って暴れ回るようなことなしないから」

「実莉のことやから壱華に会えた瞬間にハイテンションで飛びつく様子が目に浮かぶけどな」

「飛びつきたいけど壱華に怪我をさせたら一大事だから我慢するよ。
それより会ったら泣きそう。だって壱華がママになるんだよ、3歳から一緒に過ごしてるお姉ちゃんが。自分のことみたいに嬉しい」



大希の真似をして身振りを大きくすると、大希は起き上がってベッドの上にあぐらをかいた。



「まだまだ実莉にとっては壱華が一番なんやな」



そして悲しそうな微笑を顔に貼り付け私を見つめる。


そこまでして一番を勝ち取りたいんだろうか。


異性の中ではパパの次に特別な存在になりつつあるのに。


ああそうか、私が愛情表現しないから伝わらないんだ。


大希は黙ってしまった私を見て視線を外して立ち上がろうとしたけど、制止させるため抱きついた。



「でもね、ずっと大希と一緒だったから離れるのちょっとさみしいと思ってきた」

「実莉がデレた!えぇぇ、かわいいどうしたん!」



抱きついたことに動揺して大きな声で反応する大希。


みるみる笑顔になって嬉しそうに私を抱きしめた。


私は大希の腕に抱かれながら、あまりにもチョロすぎて笑ってしまった。


出会った当初、攻略対象としては最難関だと警戒していたのに今では機嫌を取るのが楽勝すぎて逆に怖い。



「私たちを助けてくれてありがとう。ちゃんとお礼も言えてなかったから今だけ甘えてあげる」



試しに更なる追い打ちをかけると、大希は天を仰ぐように上を向いて幸せを噛み締めている。


今にも召されそうでウケる。大希も案外オタク気質なのかも。
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