スカーレットの悪女
「なにこれ!」

「魔除け。婚約指輪は別にあげるからとりあえず右の薬指にしとって」



たぶん、以前もらったピンクゴールドのネックレスとお揃いのダイヤの指輪だ。


婚約指輪は別にあげるって言うけど、これ一般的には婚約指輪相当のお値段のアクセサリーですけど!?


魔除けという名の男避けに使う金額じゃないと思いますけど!



「こんなんじゃ満足できひんやろ?俺の花嫁はロマンチックなプロポーズがご所望なようなんで」



目を白黒させていると大希はニヤリと笑って私の反応を試している。



「まだ花嫁じゃないし」



ここはあえて生意気な態度を取って、歯をむき出して鼻根にしわを集める。



「出た、チワワの威嚇や。そのくせになる顔好き」



私らしい反応に大希は満足気に頭を撫で、そのまま頬に指先を滑らせ顔を合わせようとあごを持ち上げる。


見上げたその表情は、真夏の日差しのような眩しくて爽やかな笑みだった。
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