スカーレットの悪女
side 大希


実莉を乗せた車を見送り、俺はスーツに着替えた。


きっちりネクタイするのだるいわ。


だがしかし、今日は大事な日でもあるからしゃーなし首にネクタイを巻いた。



「最近ずっと上の空ですよ」



家から出て渡り廊下を通り、本家のぎしぎしと軋む縁側を歩いていると、突然後ろから声をかけられた。


赤星の声や。声かけられるまで背後に人がおったことにすら気づけんかった。


野ざらしでガタが来てるから歩いたら絶対軋んだ音がするはずやのに、なんで無音で歩けんねん。忍者かお前。


長年の付き合いやけど赤星は表情も乏しいし謎が多い。せやから飽きんでええけど。



「ちゃんと仕事はしてるやろが」

「浮かれて足を掬われても知りませんから」

「少なくとも1週間は実莉おらんから集中するわ」



縁側から室内の廊下に移り、目的地の応接間を目指す。すると赤星が短くため息をついた。



「そうしてください、じゃないと雅がずっとブー垂れてるんで」

「あ?なんで。ちゃんと雅にも構ってるやん」

「実莉さんに絆されそうで気に食わんって」

「そっちかい」



雅、まだ実莉のこと敵対視してん。まあもう一押しやろうけどあいつはあいつで俺に傾倒しすぎな。
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