スカーレットの悪女
ほんま俺の部下は個性豊かやな。赤星は見ての通り変に冷静沈着やし、雅は愛が重くて熱すぎるし。


けどまあ、ふたりとも俺の意見に従ってばかりやなくて自分の考えを貫き通すタイプやからそこが気に入ってんけど。


そう考えると実莉もそういうタイプやな。俺って意外と反抗的な人間の方が好みなんかもしれへん。



「おつかれ大希、何時からやったけ。実莉ちゃんにこれ渡したいんやけど」



すると人の思考を遮るように親父が目の前に現れて俺の足を止めた。


親父も親父で自由人やな。なんでバチバチに決めた黒スーツなのに、小脇に業務用のでっかいアイスクリームのケースを抱えてん。


今日は今後を左右する大事な日やってのにほんまこのクソ親父。



「はあ?実莉今日から実家帰ったで」

「お前もう飽きられたん!?せっかく菓子友できたと思ったのに!今度アフタヌーンティー行く約束したんやで」

「飽きられたんちゃうわ壱華が懐妊した言うからお祝いに会いに行ってん!
しかもなんや菓子友て!俺の女やねん勝手に親父の趣味に付き合わせるなや!」



なーにが菓子友や。親父め、俺より浮かれてるやないかい。


確かに親父は強面のくせに大の甘党。


実莉と話が合うんやろうけど、おっさんと美少女とか事件の予感しかせえへんから連れ回すのはやめて欲しい。


職質食らうぞアホちゃうか。



「はっは、お前が女のことでこんな怒るなんておもろいわ」



イラつく俺をよそに親父は大笑い。



「やかましいわ、その小脇に抱えてんのはよ片してこいや」

「なあ赤星、大希がこんなになるなんて思ってもなかったなあ」

「大希がと言うよりは、実莉さんがかなり特殊な女性ですからね。あれは惹かれて当然でしょう。ただ、いつまでも腑抜けだと私は困るんですよね」



対する赤星はいつもの能面フェイスで受け答え。


しかし語尾に明確な怒りが込められていた。ええ、そんなに迷惑してるん?


赤星って自分がブチ切れる寸前やないとよう愚痴言わんから困るわ、小出しにしてくれや。
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