スカーレットの悪女
「しっかり捕まえとけよ、幹奈の二の舞にはさせんように」

「親父ほど女心に鈍感じゃないわ」



赤星の突き刺さるような視線は親父が声を発したことで解消した。しかし今度は親父の発言に引っかかった。


幹奈の二の舞?あの実莉が逃げるわけないやろ。


いや違う、幹奈みたいに殺されんように用心せえってことか。


そうならんためにはよ籍入れたいんやけど。



「……って、どいつもこいつも実莉のことでいっぱいやな」



その時ふと思った。俺含め西雲の男どもは実莉のことで頭がいっぱいなんやと。


今日は雅の襲名の日。つまり雅が天音組の若頭になる大事な日やってのに、皆口を開けば実莉のことばかり。


不意に笑みがこぼれ出た。これだけの短期間で難癖のある男どもを虜にして味方につけた魔性の女や、排除されるわけがない。



「ったく、みんな実莉のこと好きやなぁ。けど今日の主役は雅や、実莉の話ばっかしてたらあかん。さて、雅の晴れ姿を見に行きましょか」



今日はめでたい日、雅の晴れの舞台。


次の慶事は自分の結婚式がええなと呟きながら会場に向かった。
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