スカーレットの悪女
「聞いたよ、大希に近づいたね」

「うん、もっと褒めろ」

「おめでとう、さすが覇王の頼れる相棒!大希も鼻が高いと思うよ」

「……はー、いけ好かん」

「なんでよ、にやにやしてるくせに」



褒め称えると嫌味ったらしく笑う。態度は悪いけど照れ隠しだな。雅は京都人だから荒瀬兄弟以上に素直になれないみたいだ。


出会った頃は会話もままならなかったけど、こうしてコミュニケーションを取れるようになったからちょっと仲良くなれた気がする。



「あー!間に合わんかった実莉どこ!?」



すると突然、遠くから大希の声が響いた。


同時にドタドタと走り回る音が聞こえて、その音がだんだん近づいてきた。



「実莉の荷物が玄関にあったんやけど本体がおらへんねん!どこにおるん実莉」



相変わらず存在感があるというか、騒がしいというか。一度大阪を離れるとこの空気感ってやっぱり独特なんだよね。


廊下の奥から現れた大希は今帰ってきたみたいで、ジャケットを脱ぎながら解いたネクタイを首にかけたまま探し回っている。


そして雅の隣に私がいることに気がつくと、分かりやすく目を輝かせた。
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